なぜイギリス?バッハ『イギリス組曲』意外な真相と難易度・名盤徹底解説
ピアノ学習者や指導者の現場において、『イギリス組曲』の扱いは特別です。全曲を通しで演奏すると20分前後の長丁場となるため、一般的なピアノ発表会やステップでは、「プレリュード単独」あるいは「プレリュード+サラバンド+舞曲(ブーレやガヴォット)」といった抜粋形式で演奏されるケースが大半を占めます。
発表会の選曲において圧倒的な支持を集めるのが、『イギリス組曲 第2番 イ短調』と『イギリス組曲 第3番 ト短調』です。第2番のプレリュードは哀愁を帯びた旋律とスリリングな展開で聴衆を惹きつけ、中間に挟まれるブーレは親しみやすいリズムで単独ピースとしても重宝されます。一方、第3番のプレリュードはダイナミックな推進力があり、華やかなステージ映えを狙う中上級者に最適です。
また、演奏にあたって極めて重要となるのが楽譜選びです。バッハの演奏では、後世の校訂者による恣意的なスラーや強弱記号が排除された「原典版」の使用が鉄則とされています。中でもドイツのヘンレ版(G. Henle Verlag)は、確かな音楽学的考証に基づいた信頼性の高さと見やすいレイアウトから、世界中の指導者・ピアニストに標準楽譜として選ばれ続けています。装飾音の解釈や運指のヒントを得る上でも、まずはヘンレ版を手元に置くことが上達への最短ルートと言えます。