田中角栄とロッキード事件の真相|5億円の謎と昭和最大の疑獄を徹底解説
ロッキード事件を語る上で、インターネットや一部の言論空間で現在も根強く囁かれているのがロッキード事件 陰謀説 アメリカです。「田中角栄はアメリカの逆鱗に触れたため、米情報機関(CIA等)に罠を仕掛けられて失脚させられたのではないか」という仮説です。
陰謀説の根拠として頻繁に挙げられるのが、田中内閣が進めた自主資源外交です。1973年の第4次中東戦争に伴う第1次オイルショックに直面した田中は、欧米の国際石油資本(石油メジャー)に依存しないエネルギー確保を目指し、中東諸国やインドネシアへの直接石油買い付け、さらにはソ連(当時)とのシベリア天然ガス開発交渉を精力的に推し進めました。これが「米国の世界戦略(キッシンジャー外交)や石油メジャーの利益を脅かしたため、米国が意図的にロッキード社の裏資料を流出させて田中を狙い撃ちにした」という筋書きです。
しかし、近年の日米外交機密文書の解禁や、当時の捜査担当者・外交官の回顧録を検証すると、この「狙い撃ち説」には客観的な証拠が乏しいことが分かっています。実態は以下の通りです。
- 全米を巻き込んだ汚職追及の余波:チャーチ委員会の調査はウォーターゲート事件以降の多国籍企業の不正を正す米国内の政治改革運動の一環であり、ターゲットは日本だけでなく、オランダ王室(ベルンハルト王配の疑惑)や西ドイツ、イタリアなど同盟国全体に及んでいた。
- 米国政府の混乱:当時フォード政権の国務長官だったキッシンジャーは、むしろ同盟国日本の政治的安定を損なうことを極度に恐れ、司法省や上院に対して資料提供を制限するよう働きかけていた事実が米公文書で明らかになっている。
- ロッキード社の経営危機:開発難航で経営危機に瀕していたロッキード社が、生き残りをかけてなりふり構わぬ贈賄工作を世界中で展開していたのが直接の要因であった。
つまり、田中角栄を意図的に嵌める謀略だったというよりは、「米国内の倫理追求の波に、日本の前時代的な金権政治が巻き込まれ、必然的に破綻した」と捉えるのが、一次史料に基づく最も妥当な検証結果です。