正距方位図法はなぜ国連旗に?特徴や歪みとメルカトル図法との違いを解剖
正距方位図法を正しく読み解くためには、その幾何学的なルールを正確に把握しておく必要があります。この図法の最大の特徴は、「図の中心から測った場合に限り、任意の地点への距離と方位が完全に正しく示される」という点に集約されます。
地球は球体(3次元)であるため、みかんの皮を破らずに平らな机(2次元)へ押し広げることができないのと同様、平面の地図を作る際には必ず「角度」「面積」「距離」「方位」のいずれかを犠牲にせざるを得ません。正距方位図法は、その代償として「中心からの距離と方位」以外のすべてを切り捨てる設計思想で作られています。
ここで多くの人が陥る落とし穴が、「どこから測っても距離が正しい万能地図」という思い込みです。正距方位図法において距離と方位が保証されるのは、あくまで「中心に設定された1点」を起点にした場合のみです。例えば、東京を中心とした正距方位図法の上で、シドニーからロンドンへ直線を引いても、その長さは実際の距離を表していませんし、その直線が示す方角も実際の方位とはまったく合致しません。
さらに特異なのが外周円の意味です。中心から地球の裏側まで最も離れた限界点、すなわち対蹠点(たいせきてん)までの距離は、地球の全周約4万kmの半分である約20,037kmです。正距方位図法を地球全体に広げて描いた場合、この最遠地点である対蹠点という「たった1つの点」が、地図の最も外側にある円周全体の長さに引き伸ばされてしまいます。
もし東京を中心にした正距方位図法を眺めると、外周円の全周すべてが「南米ウルグアイ沖の海上(東京の対蹠点)」を意味することになります。中心からどの方向へ2万km進んでも必ず同じその対蹠点に到達するため、外周の円周上にあるすべての地点は、地球上では同一の1点を示しているという幾何学的なパラドックスが生じるわけです。