魚へんの漢字、全部読める?難読から由来まで完全網羅
寿司屋のカウンターで目にする湯呑みに、なぜこれほど整然と魚へんの漢字が並んでいるのか。実はこの湯呑み、明治から大正期にかけて東京・日本橋などの下町寿司職人たちが、客の待ち時間を退屈させないための粋な趣向、あるいは職人修業の見習い教育ツールとして広めたのが始まりと言われています。中でも季節感を重んじる日本文化を象徴するのが「魚偏に四季」を配した漢字群です。
魚へんに春で「鰆(さわら)」となる理由は、瀬戸内海地方において春の風物詩として重宝されてきた歴史にあります。春先になると産卵のために外海から播磨灘などへ群れを成して押し寄せるため、漁師や庶民にとって「春を連れてくる魚」として認知されました。なお、関東では冬の「寒鰆」が脂が乗って好まれる傾向がありますが、文字の命名権を持っていた上方や古来の記録においては、春の産卵回遊が決定打となりました。
一方、魚へんに冬で「鮗(このしろ)」と書く理由は、晩秋から真冬にかけて皮下に濃厚な脂を蓄え、最も風味が際立つ旬の時期を文字にしたためです。成長に応じて「シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロ」と名を変える出世魚であり、江戸前寿司では欠かせない光り物ですが、成魚の鮗は冬の滋味として長く愛されてきました。
そして身近な大衆魚の代表格、魚へんに青で「鯖(さば)」の雑学にも深い経緯があります。「青魚の代表だから青」という単純な見た目の連想に思えますが、漢語における「青」は単なる色彩だけでなく、「澄んだ深い色」「若々しい生命力」を内包します。鯖の背中に浮かび上がる青藍色のまだら模様は、水揚げされた瞬間に群青の輝きを放ちます。傷みやすい性質から「鯖の生き腐れ」「鯖を読む」といった慣用句を生み出しましたが、文字そのものは海中を俊敏に泳ぐ美しい青い背への賛美から命名されています。