元農水次官・熊澤英昭の現在と判決の真相|壮絶な家族の悲劇と教訓
農水次官長男殺害事件の真相を理解するためには、事件当日の突発的な衝突だけでなく、30年以上にわたって積み重なった家庭内の過酷な葛藤を直視する必要があります。
熊澤英昭氏の経歴は、東京大学法学部を卒業後、1967年に農林省(現・農林水産省)へ入省。経済局長、畜産局長、大臣官房長といった要職を歴任し、2001年には事務方トップである事務次官に就任した絵に描いたようなトップエリート官僚でした。退官後もチェコ駐箚特命全権大使などを務め、周囲からは順風満帆な名家と見られていました。
しかし、その華々しいキャリアの裏側で、家庭内は長年にわたり荒れ狂っていました。法廷で明かされた事実によると、長男は中学時代から激しい家庭内暴力に及んでおり、母親に対する執拗な暴力によって母は肋骨を骨折し、うつ病を発症。長男は大学進学や就職を試みるも社会に適応できず、アスペルガー症候群(発達障害)の診断を受け、長期間にわたり無職のままオンラインゲームに没頭する引きこもり生活を送っていました。
一時は一人暮らしをさせていた長男でしたが、ゴミ屋敷化した住環境や体調悪化を機に、事件のわずか1週間前(2019年5月下旬)に実家へ戻ることになりました。しかし同居再開の翌日、長男は「自分の人生は何だったんだ」と熊澤氏を激しく殴打し、頭部をドアに打ち付けるなど家庭内暴力を再燃させました。「次に暴力を振るわれたら殺される」という恐怖が、元次官の精神を極限まで追い詰めていくことになります。