宇津ノ谷峠の心霊現象は本当?明治トンネルの怪談に隠された驚きの真相とはについて押さえておきたい 注意点を分かりやすい構成で解説いたします。
宇津ノ谷峠の真の凄みは、怪談ではなくその比類なき交通土木史にあります。この峠には、古代から現代に至るまで異なる時代に開削された道が一本の山肌に寄り添うように集中しており、「日本の交通発達史をそのまま歩いて遡ることができる野外博物館」と称されています。
平安時代初期に利用されていた「蔦の細道(つたのほそみち)」は、『伊勢物語』の東下り第9段で在原業平が「駿河なる宇津の山べのうつつにも 夢にも人にあはぬなりけり」と詠んだことで名高い古道です。うっそうとした木々に覆われた細い山道は、中世に豊臣秀吉が小田原征伐の軍勢を通すために新たな峠道を切り開くまで、東西を結ぶ主要幹線でした。
近世に入ると徳川家康によって東海道が整備され、宇津ノ谷集落は丸子宿と岡部宿の間に位置する間の宿(あいのしゅく)として賑わいました。そして近代以降は、技術革新とともに次々とトンネルが開削され、大正・昭和・平成へとバトンが繋がれていきました。
時代・ルート名開通・築造時期構造・通行区分特徴・編集部の見学ポイント蔦の細道(古代道)奈良〜平安時代自然山道(徒歩専用)『伊勢物語』ゆかりの名所。急峻な尾根を越える本格的ハイキングコース。旧東海道(江戸期の道)1590年開削/江戸初期整備石畳・未舗装路(徒歩専用)石畳が残り、宇津ノ谷集落から峠頂上の地蔵堂跡まで江戸の旅情を色濃く残す。明治トンネル(明治隧道)1876年開通/1904年煉瓦再建赤煉瓦造・延長203m(歩行者・自転車)国の登録有形文化財。総煉瓦積みの美しい意匠とレトロなカンテラ照明が秀逸。大正トンネル(現県道208号)1930年(昭和5年)竣工コンクリート造(車両・歩行者)大正期に着工したため大正と呼ばれる。現在も生活道路・県道として現役稼働。昭和トンネル(国道1号現道)1957年(昭和32年)開通2車線道路(自動車専用に近い)戦後日本の大動脈として開削。現在は国道1号の上り線バイパスとして機能。平成トンネル(新宇津ノ谷)1990年(平成2年)開通高規格2車線(国道1号バイパス)最新土木工法で建設され、大量の大型物流トラックが昼夜を問わず行き交う。
このように、わずか数百メートルの範囲に6つの時代の道が整然と並んでいる景観は日本国内でも極めて稀であり、土木学会選奨土木遺産や国の登録有形文化財に指定されている理由がここにあります。
田中 結衣
デジタルマーケティングコンサルタント
グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。