下壁梗塞の心電図で命を救う!St上昇と合併症の急所を徹底解説
下壁梗塞に直面したカテーテルチームが最初に行う思考プロセスは、閉塞している血管が右冠動脈(RCA)なのか、それとも左回旋枝(LCx)なのかを心電図から特定することです。解剖学的に左室下壁は、約85%の日本人において右冠動脈が後下行枝(4PD)を出して栄養する「右冠動脈優位型」ですが、残る約15%では左回旋枝が灌流を担当しています。
心電図からこの2者を鑑別する下壁梗塞責任病変見分け方には、明確な電気的法則が存在します。キーとなるのは「誘導IIIと誘導IIのST上昇幅の比較」、そして「誘導IにおけるST節の向き」です。誘導IIIは右下方(+120度)を向いており、右冠動脈の走行領域と角度が極めて近いため、RCA閉塞では「ST上昇:誘導III > 誘導II」となります。さらに、右冠動脈病変では電気ベクトルが右側へ偏るため、誘導I(0度)でST低下が強く現れます。一方、左後方へ走るLCxの閉塞では、誘導II(+60度)のST上昇が誘導IIIを上回るか同等になり、誘導IのSTは低下せず基線にとどまるか、むしろ軽度上昇を示します。