「土人」はなぜ差別用語なのか?語源と歴史の真相・使用禁止の理由
「言葉そのものに善悪はないのではないか」「土地の人という意味なら問題ないはずだ」という論理が、現代の法規範や社会通念において一切受け入れられないのには明確な理由があります。言葉は辞書的な原義だけで機能しているのではなく、歴史の中で誰が誰に対してどのように行使してきたかという文脈を不可分に背負っているためです。
明治政府は、北海道の先住民族であるアイヌに対して1899年(明治32年)に「北海道旧土人保護法」を制定しました。「保護」という美名のもとでアイヌ民族固有の言語や風習、伝統的な狩猟・漁労を厳しく制限し、農業への転換と日本語教育を強制する同化政策を推進したのです。法律名に冠された「旧土人」という呼称は、アイヌの人々を国家の枠組みにおいて二等臣民として固定化し、蔑視する公的な烙印として機能しました。
アイヌ民族による長年の撤廃運動と人権回復の訴えが実を結び、同法が完全に廃止されたのは1997年の「アイヌ文化振興法」制定時です。実に100年近くにわたり、公的法規範のなかで「未開の民」というスティグマ(負の烙印)を押すために使われてきた言葉である以上、それを現代において誰かに向ける行為は、過去の搾取と同化政策の暴力をそのまま肯定することと同義とみなされます。