衝撃の新作『人 と 木』独占解禁!是枝裕和×役所広司の制作秘話
クランクインは新緑が眩しい山梨県奥秩父の原生林で行われた。撮影現場に漂うのは、緊張感というよりも息をのむような静寂だ。カメラの前に立つ役所広司は、樹齢数百年を超える大木に静かに手を当て、じっと耳を澄ませる。一見すると何の変哲もない仕草。しかし、その背中に宿る圧倒的な存在感が、現場の空気を一変させていた。
是枝裕和監督はモニターを見つめながら、一切の無駄を削ぎ落とした静かな声で指示を出す。「芝居をしないでほしい。木と、ただそこにいてほしい」。名匠が求めたのは、演者と自然が交錯する瞬間に立ち上る生々しいリアリティだ。役所もまた、その期待に呼応するように言葉を最小限に抑え、全身の毛穴で森の息吹を吸い込むような怪演を見せる。