四万十川沈下橋に欄干がない理由とは?車の転落リスクと名橋の現在
「普通の乗用車でも沈下橋を渡れるのか」という疑問に対し、法的な回答は「イエス」です。四万十川水系に現存する沈下橋の多くは市道や町道に指定されており、地元住民にとっては軽トラックや生活車両が行き交う重要な生活動線です。しかし、一般の観光ドライバー、とりわけ不慣れなレンタカーで通行する場合、そのリスクは極限まで跳ね上がります。
四万十市観光協会や地元警察署の関係者は、取材に対して次のように現場の実態を明かします。
「地元の方はタイヤの位置がミリ単位で身体に染みついていますが、観光客の方は景色の美しさに目を奪われたり、車幅感覚を掴めないまま進入して立ち往生するケースが頻発しています。最も危険なのが、対向車と出くわしてパニックに陥り、無理にバックしようとして後輪を川へ落とすパターンです」
多くの沈下橋は車幅が3.0メートル〜4.2メートル程度しかなく、側壁や脱輪防止用のブロック(地覆)も数センチの段差があるかないかというレベルです。運転席から左右を見下ろせば、ガードレールなしにそのまま深い川面が広がっています。バックミラー越しには逃げ場のない一直線の細道が映り、強烈な視覚的プレッシャーからドライバーが平衡感覚を狂わせる「空間識失調」に似た恐怖を覚えることも珍しくありません。
万が一、車ごと川へ転落した場合、水深や水流によっては命に直結する重大事故へと発展します。さらに経済的な打撃も甚大です。河川からの車両引き上げには特殊大型レッカーやダイバーの出動が必要となり、数十万円規模のサルベージ費用が請求されるうえ、水没車両は全損扱いとなります。レンタカー各社の休業補償(NOC)や保険適用外条項に抵触する恐れもあり、「人生最悪のドライブ」になりかねない危うさを孕んでいます。