生誕100年、なぜ「安野光雅」の騙し絵と繊細な水彩画はデジタル時代の世界を魅了し続けるのか?
『旅の絵本』のページをめくるとき、読者は提示されたテキストを読むのではなく、画面の隅々に隠された物語を自らの目で発見する「探索者」となる。馬に乗った一人の旅人が静かに街から街へ、国から国へと旅する風景の中に、名画の一節や童話の登場人物、歴史的な出来事が密かに潜み込ませてある。
この「文字のない絵本」という挑戦は、発表当時から欧米でも絶大な評価を受けた。言葉の壁を軽々と飛び越え、子供から大人まで同じ地平で視覚的会話を楽しめる構造は、SNSを中心としたビジュアルコミュニケーション全盛の現在、より一層の鮮やかさを増している。能動的に絵と対話し、細部を凝視する歓びを、彼は半世紀以上前に提示していたのだ。