サザン最大の怪作『イエローマン』封印の真相と2026年の再評価
『イエローマン 〜星の王子様〜』が世に放たれた1999年春、サザンオールスターズを取り巻く環境は極めて特異なフェーズにありました。前年1998年6月発売の2枚組ベスト『海のYeah!!』が空前のロングセラーを記録し、国民的ポップスバンドとしての地位を盤石にする一方で、同年10月に発表された13thオリジナルアルバム『SAKURA』は、ダークなグランジ、重厚なヒップホップ、緻密なサンプリングを多用した極めてアグレッシブな作品でした。
当時のビクタースタジオにおける桑田佳祐の制作秘話を紐解くと、バンドは既存の「夏・海・バラード」という大衆が求めるステレオタイプなサザン像から意図的に距離を置き、純粋な音楽的快楽とスタジオワークの限界突破に没頭していました。打ち込みのリズムトラックに歪んだギター、スラップベースが絡み合う高速ブレイクビーツの骨格は、まさにその実験精神の頂点として構築されたものです。
大衆的なコマーシャリズムに安住せず、ミリオンセラー直後だからこそあえてリスナーを突き放すようなアヴァンギャルドな音像をシングルA面に据える――。この過激なクリエイティビティこそが、本作が誕生した最大の背景です。