熱はないのに体がだるい原因は病気?見逃せない危険サインと受診目安
休息をとっても回復しない場合、倦怠感・熱なしの隠れた病気が進行している可能性を視野に入れなければなりません。臨床現場で頻繁に確認される代表的な疾患は以下の通りです。
まず警戒すべきは、20代から40代の女性に圧倒的に多い鉄欠乏性貧血です。一般的な健康診断の赤血球数やヘモグロビン濃度が正常範囲内であっても、体内の貯蔵鉄である「フェリチン」が極端に枯渇している「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏症)」がだるさの主因であるケースが急増しています。階段を上る際の動悸、ふらつき、爪のスプーン状変形や氷を無性に食べたくなる症状(異食症)を伴う場合は、強い疑いが生じます。
次に、首の前側にある甲状腺ホルモンの分泌が低下する甲状腺機能低下症(橋本病など)が挙げられます。全身の代謝が著しく低下するため、平熱であるどころか低体温傾向になり、甲状腺機能低下症による倦怠感をはじめ、寒がり、皮膚の乾燥、まぶたや手足のむくみ、体重増加、気力の低下といった症状が複合的に現れます。
40代以降の男女であれば、更年期障害に伴うだるさの症状も有力な候補です。女性ホルモン(エストロゲン)や男性ホルモン(テストステロン)の急激な減少により、間脳の視床下部がパニックを起こし、自律神経の調節が破綻します。ホットフラッシュ(ほてり・発汗)がないタイプでも、鉛を背負ったような疲労感だけが突出して自覚される例は珍しくありません。
さらに精神医学的領域では、うつ病の初期症状として「体が重い」という身体愁訴が先行する「仮面うつ病」が知られています。本人は気分の落ち込みを自覚しておらず、「なぜか体が動かない」「朝の身支度が異常に億劫」「億劫感で新聞や動画の内容が頭に入らない」といった身体の拒絶反応として現れます。
加えて、微熱や感染症などを契機に発症し、半年以上にわたり社会生活が困難なほどの消耗が続く慢性疲労症候群(ME/CFS)も深刻な課題です。慢性疲労症候群の診断基準では、一般的な休息では回復せず、労作後24時間〜48時間後に急激な悪化(PEM:労作後増悪)がみられる点、認知機能障害(ブレインフォグ)や起立不耐症を伴う点が厳格に規定されています。