お宮参りで誰が抱くか揉めた?真相と現代マナー完全版
お宮参りの現場で「しきたりだから」と父方の祖母が赤ちゃんを抱っこする慣習には、明確な歴史的背景が存在します。決して「母親よりも義母のほうが偉い」という序列を示しているわけではありません。その根底には、神道における宗教観と、医学が未発達だった時代の生活の知恵という2つの側面が絡み合っています。
第1の決定的な要因は、古代から中世にかけて定着した神道における「血の穢れ(産忌・うぶいみ)」という観念です。かつての神道儀礼では、出血を伴う出産は神聖な神域から遠ざけるべき一時的な不浄と見なされていました。出産を経た母親の身体は一定期間(地域により概ね75日〜100日程度)「忌(いみ)」の期間中とされ、鳥居をくぐって神社の境内へ入ること自体が禁忌とされていたのです。そのため、母親に代わって「嫁ぎ先の代表」であり身内でもある父方の祖母が赤ちゃんを抱き、氏神様へ誕生を報告する役目を担いました。
第2の要因は、極めて実用的なお宮参りにおける産後の体調考慮です。生後30日前後の時期は、医学的にも「産褥期(さんじょくき)」の真っ只中であり、母胎の子宮復古やホルモンバランスの乱れが続いています。医療機関や助産師の証言でも、この時期の無理な外出や重い荷物の運搬は将来的な子宮脱や慢性疲労を引き起こすリスクがあると警告されています。昔の人々は、重い祝い着を着せて長時間赤ちゃんを腕に抱き続ける重労働から産婦を解放し、休養を取らせるために、実質的な代理役として父方の祖母を立てたという側面が強かったのです。