雪女と蟹を食うドラマあらすじと結末|絶望の旅が導いた生と死の真相
物語の起点は、都内の薄暗い一室で首吊り自殺を図ろうとしていた青年・北(重岡大毅)の絶望でした。身に覚えのない痴漢冤罪によって婚約者を失い、職場を解雇され、貯金も底をついた北は、テレビのグルメ番組で映し出された高級蟹を目にし、「どうせ死ぬなら、最後に美味い蟹を腹一杯食べてから死のう」という衝動に駆られます。包丁を握りしめ、高級住宅街に佇む豪邸へと強盗に押し入った北が遭遇したのが、小説家を夫に持つ淑やかなセレブ妻、雪枝彩女(入山法子)でした。
金品を要求し、激情に任せて襲いかかる北に対し、彩女は一切の怯えを見せることなく、冷徹なまでの静けさで自らの身と金銭を差し出します。そればかりか、北が口にした「蟹を食べて死ぬ」という言葉に奇妙な執着を見せ、「私を北海道へ連れて行ってください。旅費はすべて私が持ちます」と驚くべき提案を持ちかけたのです。こうして、金も行き場もない犯罪者と、謎多き人妻による、死を前提とした奇妙な逃避行が幕を開けました。
東京を出発した二人は、愛車で北関東から東北へと北上していきます。日光では彩女の気まぐれに翻弄されつつも、孤独なホステス・マリア(久保田紗友)との出会いを通じて人間らしい温もりに触れ、会津若松や山形、銀山温泉、秋田、青森へと進むにつれ、北は彩女が時折見せる「この世に留まる気のない虚無の表情」に戦慄を覚えるようになります。北が生きる希望を失った理由は理不尽な社会的制裁でしたが、彩女が死を望む動機はより深く、精神の深淵に根ざしたものでした。
津軽海峡をフェリーで渡り、ついに北海道へと上陸した二人。函館から札幌、そして最終目的地である稚内へと至る道中で、北は彩女への激しい恋情を自覚すると同時に、「彼女を死なせたくない」という生への執着を取り戻していきます。しかし、彩女の決心は揺らぎませんでした。稚内の食堂で、念願だった極上の蟹を貪り食う二人。その夜、ホテルのベッドで愛を確かめ合った後、彩女は北が深い眠りに落ちたのを見届け、一人冷え切った宗谷岬の海岸へと向かいます。
彩女の目的は最初から、北に蟹を食べさせることではなく、「北の手を借りて北海道へ行き、そこで自ら命を絶つこと」だったのです。目を覚まし、姿を消した彩女の置手紙を発見した北は、激しい風雨が吹き荒れるオホーツクの海へと疾走します。荒れ狂う波間に身を投げた彩女の身体を、北は必死の思いで抱き留め、砂浜へと引き揚げて人工呼吸を施しました。息を吹き返した彩女に対し、北は号泣しながら「生きてくれ、一緒に生きよう」と魂の底から叫びます。
物語のエピローグでは、現実的な清算が容赦なく描かれます。北は強盗および住居侵入の容疑で警察に自首し、数年間の実刑判決を受けて服役。彩女は不貞と搾取に塗れた夫・一騎との婚姻関係を正式に清算し、自立した生活を営みながら、北の出所を待ち続けました。刑期を終え、刑務所の門を出た北の前に現れたのは、質素ながらも穏やかな笑みをたたえた彩女の姿でした。二人が交わした言葉は少なくても、その眼差しには「死の同盟」を脱し、「生の連帯」へと昇華した確かな再生の光が宿っていたのです。