吉高由里子『蛇にピアス』の真相|19歳の覚悟と過激作の裏側
映画『蛇にピアス』の原作は、2003年に当時20歳だった金原ひとみが発表し、綿矢りさの『蹴りたい背中』とともに第130回芥川賞を最年少で同時受賞した大ベストセラー小説です。渋谷のアンダーグラウンドカルチャーを舞台に、舌にピアスを開け、徐々に拡張して二股に分かれた舌「スプリットタン」を目指す少女・ルイの内面を描いた本作は、発売当初から社会現象を巻き起こしました。
この先鋭的な文学を実写映画化するにあたり、メガホンを取ったのは演劇界の巨匠・蜷川幸雄監督でした。当時、主人公のルイを演じる女優のキャスティングは難航を極めました。過激な性描写や暴力描写、さらにはフルヌードが不可避とされる脚本に対し、多くの芸能事務所が所属若手女優の起用を躊躇したためです。その中で、オーディションを通じてルイ役をもぎ取ったのが、撮影当時わずか19歳の吉高由里子でした。
共演陣には、赤いモヒカン頭に全身タトゥーを施し、ルイを狂気と純愛で包み込むアマ役に高良健吾。そして、アマの紹介でルイの舌にピアスを開け、背中に龍と麒麟の刺青を彫りながら彼女を支配していくサディスティックな彫師・シバ役にARATA(現・井浦新)が抜擢されました。当時若手だった高良健吾とARATAの鬼気迫る佇まいは、吉高由里子が演じるルイの脆さと危うさを極限まで引き出し、生々しい人間ドラマの骨格を形成しました。
蜷川幸雄監督が現場で求めたのは、単なる露出やショッキングな演出ではなく、「痛覚を通した生の証明」でした。吉高由里子は後に当時の特番インタビューや手記において、「台本を読んだとき、恐怖よりもルイという人間の孤独に惹かれた。脱ぐことに対する恥ずかしさよりも、彼女を嘘偽りなく演じ切らなければ作品が死んでしまうというプレッシャーの方が遥かに大きかった」と述懐しています。