幸福の国ブータンはなぜ幸福度急落?若者流出が止まらない衝撃の真相
経済の起爆剤である観光政策においても、ブータンは大きな揺らぎを経験しました。環境と文化を守るため、入国者数を制限する目的で導入されていた持続可能な開発料(SDF: Sustainable Development Fee)は、新型コロナウイルス禍後の国境再開時にそれまでの1泊65米ドルから1泊200米ドルへと大幅に引き上げられました。
しかし、この強気の価格設定は外国人観光客の激減を招き、ホテルやガイド、飲食などの観光従事者に大打撃を与えました。危機感を強めた政府は方針を転換し、2023年秋に1泊100米ドルへと半額に引き下げるインセンティブ措置を導入(2027年8月末までの時限措置)。環境保護の哲学と現実の経済維持との間で、極めてシビアな舵取りを強いられています。
こうした閉塞感を打破すべく、ワンチュク国王が国家の命運を賭けて主導しているメガプロジェクトが、南部ゲレフーに建設予定の特別管理地域「ゲレフー・マインドフルネス・シティ(GMC)」構想です。インド国境に隣接する広大なエリアに、仏教の精神性や環境基準を組み込んだ国際金融・先端テクノロジー・グリーンエネルギーの特区を創出する計画です。国内外の投資を呼び込み、世界中へ飛び出した優秀なブータンの若者たちが母国に戻って活躍できる新たな産業基盤をつくる——これこそが、ブータン王室が描く起死回生の未来図です。