国宝・阿修羅像の表情が語る悲哀の謎|三つの顔に秘められた真実
顔の左右で表情や骨格のバランスが大きく異なる点は、長年研究者の間で議論の的となってきた。現代のデジタル写真測量や三次元計測のデータは、その非対称性が決して偶然の産物ではないことを示している。
奈良国立博物館などによる最新の学術調査では、目元の切り込みの深さや頬のライン、さらには眉根の引き上がり方に数ミリ単位の意図的な左右差が確認された。正面の顔であっても、左側から仰ぎ見るとキリリとした緊張感が際立ち、右側から見ると物憂げな哀愁が際立つ。光の射し込む角度によって影の出方が変化し、鑑賞者の心象風景と同調するかのように表情が変化して見える。計算し尽くされた非対称性こそが、千年の時を超えて人々を引きつけて止まない生命感の源泉なのだ。