大内宿ねぎそば、なぜ箸を使わない?三澤屋の食べ方を完全解説
器の縁から弓なりにしなった長ネギが飛び出している光景は、一見すると現代のSNS映えを狙った奇策のように思われがちです。しかし、このユニークな形態の根底には、会津の歴史と宿場町ならではのもてなしの精神が深く息づいています。
ルーツを辿ると、会津藩初代藩主・保科正之公がかつて治めていた信州高遠藩(現在の長野県伊那市周辺)から会津へ伝えた「高遠そば(たかとおそば)」に行き着きます。高遠そばは、辛味大根のおろし汁や焼き味噌をつゆに溶いて食すのが本来の流儀でした。この伝統食を現代のスタイルへと昇華させた立役者が、大内宿の古民家食事処「三澤屋」の創業者です。
江戸時代から続く会津の蕎麦文化を大内宿の観光再生と結びつけるにあたり、「切る」という行為を避ける日本の祝い文化に着目したと伝えられています。ネギを刃物で刻まずに丸ごと一本添えることで、「ネギのように真っ直ぐ、太く長く生きる」「子孫繁栄」「運をかき寄せる」という縁起を担ぎました。また、ネギの先端が自然に曲がっている形状が蕎麦をすくい上げる「鍵ホック」の役割を果たすことから、あえて箸を添えずに提供する斬新なスタイルが誕生しました。