敷金・礼金とは何が違う?なぜ戻らない?ゼロゼロ物件に潜む罠をプロが解説
敷金は原則返還される金銭であるにもかかわらず、国民生活センター等に寄せられる賃貸関連の相談件数において、毎年上位を占め続けるのが敷金返還トラブルです。取材現場でも「きれいに使っていたはずなのに、10万円以上の追加請求をされた」「敷金が1円も戻ってこない」といった入居者の怒りの声が日常茶飯事のように聞かれます。
敷金が戻ってこない理由の根本には、原状回復の定義をめぐる「故意・過失」と「通常損耗・経年劣化」の境界線が曖昧に扱われている実態があります。民法第621条では、借主は退去時に原状回復義務を負うと明記されていますが、同時に「通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに賃借物の経年変化については、この限りでない」と明確に除外されています。
判断基準となるのが、国土交通省原状回復ガイドラインです。この基準において、以下のように負担区分が明確に規定されています。
最も警戒すべきは、退去時立ち会い費用負担の現場です。退去当日、管理会社や原状回復業者がチェックシートを持参し、「ここはお客様の負担になりますので、サインをしてください」と迫るケースがあります。一度サインしてしまうと「債務を承認した」とみなされ、後からの覆しが極めて困難になります。金額に納得がいかない場合、その場で即座にサインせず、「国交省ガイドラインに照らし合わせ、内訳明細書を送付してください。確認のうえ後日回答します」と持ち帰る姿勢が身を守ります。