Deen『このまま君だけを奪い去りたい』誕生秘話と2026年の歌唱力

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『このまま君だけを奪い去りたい』という楽曲が辿った航路は、日本のポピュラー音楽史の中でも際立ってドラマティックです。当時、数々のミリオンヒットを連発していたプロデューサー・長戸大幸率いるビーイングにおいて、このプロジェクトは「バンドの結成」ではなく「タイアップCMソングのコンペティション」から幕を開けました。

織田哲郎が書き下ろした哀愁に満ちたデモテープに対し、作詞を依頼されたのが当時WANDSのフロントマンとして時代の寵児となっていた上杉昇でした。上杉は自身が歌うことのない他者への提供曲でありながら、若き日の孤独、焦燥、そして言葉にできない純愛の痛みを極めてパーソナルな筆致で綴り上げました。編曲はビーイングサウンドの屋台骨を支えた名匠・葉山たけしが担当し、繊細なアコースティックギターと重厚なシンセサイザーのレイヤーが構築されていきます。

当時ソロシンガーとしてのデビューを目指し、オーディションを重ねていた池森秀一がこのデモ曲の仮歌を担当した瞬間、現場の空気は一変しました。関係者の証言によると、長戸プロデューサーはその透明感と哀愁を帯びた唯一無二のハイトーンボイスを聴き、「この声でいく。彼を中心としたバンドを組もう」と即断。急遽メンバーが集められ、DEENというグループが誕生したのです。つまり、バンドが存在したから曲が生まれたのではなく、「この曲と池森の声が、DEENという生命体を誕生させた」というのが歴史の真実です。

さらに追い風となったのが、新人女優・裕木奈江が出演したNTTドコモ「ポケベル」のCMソングへの大型タイアップでした。文字通り画面越しに思いを募らせる若者たちの切実なコミュニケーションツールであったポケベルと、池森の切迫感あるサビの歌声が見事な相乗効果を生み出し、発売と同時にオリコンチャートを急上昇。デビュー曲にしてミリオンセラーという驚異的な金字塔を打ち立てました。

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