大相撲の懸賞金は1本いくら?手取り額と税金の真相&歴代最多記録
「なぜ協会は現金をその場で全額渡さず、半分を天引きするのか?」という疑問には、力士の雇用形態と日本の税法が深く関わっています。
十両以上の関取は日本相撲協会から月給を受け取る立場ですが、同時に相撲興行に出場して賞金を得る「個人事業主」としての側面を併せ持っています。土俵上で得る懸賞金は、税法上「事業所得」に区分されます。懸賞金は給与所得の源泉徴収とは別枠であり、翌年3月の確定申告で自ら納税しなければなりません。
横綱や大関クラスになると、懸賞金の年間獲得額は数千万円から1億円を突破します。日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、課税所得4,000万円超の部分には最高税率45%が適用され、住民税10%と合わせると約55%が税金として徴収されます。
かつて昭和から平成初期にかけて、土俵上で手にした大金を豪快に飲食や後援者への返礼に使ってしまい、翌春の確定申告で数千万円の納税通知書を突きつけられて青ざめる力士が後を絶ちませんでした。自己破産のリスクから力士を守るため、相撲協会は「1本につき3万円」を本人名義の預金口座へ強制的にプールし、税金の支払期日に納税充当金として振り込む安全装置を制度化したのです。なお、納税後に余剰金が出た場合は、力士本人の口座へ還付されます。
また、土俵上で勝ち名乗りを受けた力士が右手を三度切る「手刀(しゅとう)」の所作にも、金銭授受を生々しく見せない伝統の知恵が宿っています。手刀は「左(神産巣日神)・右(高御産巣日神)・中(天御中主神)」の造化三神に感謝を捧げる儀礼であり、「神聖な土俵上で金銭の亡者になってはならない」という武士道精神の表れでもあります。