なぜ城崎温泉「西村屋本館」は最高峰と絶賛される?160年続く老舗の真価を徹底解説
門をくぐった瞬間に漂う白檀の香りと、打ち水が施された石畳。西村屋本館の暖簾の先には、日常の喧騒を完全に遮断した別世界が広がっています。本館の敷地中央に配置された約500坪の日本庭園を囲むように、木造2階建ての回廊が巡らされており、歩みを進めるごとに異なる借景が視界に飛び込んできます。
宿の誇る歴史的価値を決定づけているのが、国の登録有形文化財に登録された建築群です。特に昭和30年代に数寄屋建築の名匠・平田雅哉(ひらたまさや)が手がけた「平田館」の客室は、釘を極力使わない伝統工法、贅を尽くした銘木の選定、計算し尽くされた障子からの採光など、部屋そのものが美術品と呼ぶにふさわしい構造美を誇ります。
客室の縁側に腰を下ろすと、錦鯉が優雅に泳ぐ池と手入れの行き届いた苔庭が広がり、庭園の滝のせせらぎだけが静かに響きます。歴史の重厚感を残しながらも、畳の感触や襖の開閉音に至るまで寸分の狂いもなく調整されており、単なる古い建物ではなく「現役の生きた文化財」として維持管理されている現場の手間が随所に伝わってきます。